今回の記事では逆ラプラス変換について解説していきます。
逆ラプラス変換とは
ラプラス変換と逆ラプラス変換の関係は、関数と逆関数の関係と同じ感じだと考えるとわかりやすいです。逆ラプラス変換の定義は以下の通りです。
s領域の関数F(s)に対して
$$F(s)=L[f(t)]$$
を満たすf(t)をF(s)の逆ラプラス変換という。式としては
$$f(t)=L^{-1}[F(s)]$$
と表す
逆ラプラス変換をたたみ込みで解く
逆ラプラス変換とたたみ込み
複雑な式の逆ラプラス変換を、たたみ込みを利用することで容易に計算できることがあります。たたみ込みについて詳しくはこちらを参照してください。

逆ラプラス変換をたたみ込みを利用して解くのに必要な定理があります。
$$L^{-1}[L[f(t)]L[g(t)]]=f(t)\ast g(t)$$
下に証明を示しておきます。
$L^{-1}[L[f(t)]L[g(t)]]=f(t)\ast g(t)$
たたみ込みのラプラス変換を利用することで簡単に証明することができます。
$$L[f(t)\ast g(t)]=L[f(t)]L[g(t)]$$
この式の両辺を両辺ラプラス変換することで
$$L^{-1}[L[f(t)]L[g(t)]]=f(t)\ast g(t)$$
この定理が何を表しているかというと、複雑な式の逆ラプラス変換でも、簡単にt領域にできる式の積に式変形することで、たたみ込みに変えることができるということです。例題をやっておきましょう。
例題
【例題(1)】$L^{-1}[\frac{1}{s^2 (s^2 +1)}]$を求めよ
まずは簡単にt領域にできるものの積に式変形してすることを考えます。この問題において、$L[t]=\frac{1}{s^2}$と$L[\sin{t}]=\frac{1}{s^2+1}$がt領域に簡単にできるので
\begin{eqnarray} L^{-1}[\frac{1}{s^2 (s^2 +1)}]& &=L[\frac{1}{s^2}・\frac{1}{s^2+1}] \\& &=L^{-1}[L[t]L[\sin{t}]] \end{eqnarray}
ここで先ほどの定理を利用して
$$=t\ast \sin{t}$$
$$=\sin{t} \ast t$$
$$=\int_{0}^{t} \sin{(t-u)}・udu$$
$$=\left[u\cos{t-u} \right]_0^t -\int_{0}^{t} \cos{(t-u)}du$$
$$=t-\left[-\sin{(t-u)} \right]_0^t$$
$$t-\sin{t}$$
このように複雑な式の逆ラプラス変換でも、ただのたたみ込みの計算で答えを出すことができました。
逆ラプラス変換の解き方
逆ラプラス変換の公式について覚える必要は全くありません。ラプラス変換の公式さえ覚えていれば大丈夫です。逆ラプラス変換はこの3STEPで解くことができます。
ラプラス変換の公式より、どの公式を使えばs領域からt領域に直せるかを考えます。複雑な式の逆ラプラス変換は、STEP2に進みます。
ラプラス変換がいきなり使えない複雑な式の逆ラプラス変換は、「部分分数分解を使って簡単にt領域に変換できる式の和にする」か、「たたみ込みを使って簡単にt領域にできる式の積にする」かのどちらを使ったほうが計算が楽か考えます。
うまく式変形して部分分数分解かたたみ込みを使えるようにします。
この3STEPを使って早速練習問題に取り組んでみましょう。
練習問題
練習問題にチャレンジしてみましょう。
(1)$L^{-1}[\frac{1}{s^3}]$を求めよ
与式の形より、$\ L[t^n]=\frac{n!}{s^{n+1}}$に$n=2$を代入した
$$L[t^2]=\frac{2!}{s^{2+1}}=\frac{2}{s^3}$$
を利用すると予想できます。ここで、分子の2が余計なので$t^2$に$\frac{1}{2}$をかけた
$$\frac{t^2}{2}$$
が答えです。このように式が簡単な逆ラプラス変換はたたみ込みや部分分数分解を使うまでもありません。
(2)$L^{-1}[\frac{2}{(s-2)^4}]$を求めよ
与式の形より、$\ L[t^n]=\frac{n!}{s^{n+1}}$に$n=3$を代入した
$$L[t^3]=\frac{3!}{s^{3+1}}=\frac{6}{s^4}$$
を利用すると予想できます。しかし、sが2だけ平行移動しているので$e^{2t}$をかけて
$$L[e^{2t}t^3]=\frac{6}{(s-2)^4}$$
として、これを使いましょう。与式と比較することで
$$L^{-1}[\frac{2}{(s-2)^4}]=\frac{1}{3}e^{2t}t^3$$
これもたたみ込みや部分分数分解を使うまでもありませんでした。
(3)$L^{-1}[\frac{s}{s^2-4s+8}]$を求めよ
$ \ L[\sin{\omega t}]=\frac{\omega}{s^2+\omega^2}$、$ \ L[\cos{\omega t}]=\frac{s}{s^2+\omega^2}$を利用することで分母が$s^2+\omega^2$の逆ラプラス変換を求めることができます。このことより、分母が$s^2+ as+b$のときは分母を平方完成することで同じように逆ラプラス変換を求めることができます。よって
$$L^{-1}[\frac{s}{s^2-4s+8}]$$
$$= L^{-1}[\frac{s}{(s-2)^2+2^2}]$$
$$=L^{-1}[\frac{s-2}{(s-2)^2+2^2}+\frac{2}{(s-2)^2+2^2}]$$
うまいこと式変形をしたことで$ \ L[\sin{\omega t}]=\frac{\omega}{s^2+\omega^2}$、$ \ L[\cos{\omega t}]=\frac{s}{s^2+\omega^2}$を利用できそうです。しかし、それぞれsが2だけ平行移動しているので$e^{2t}$をかけて
$$=e^{2t}\cos{2t}+e^{2t}\sin{2t}$$
(4)$L^{-1}[\frac{s}{(s^2+1)^2}]$を求めよ
この問題は、このままではt領域に変換できそうもないのでたたみ込みか部分分数分解を利用することを考えます。与式は部分分数分解できなさそうなので、たたみ込みを利用します。
まずは簡単にt領域にできるものの積に式変形します。
$$L^{-1}[\frac{s}{(s^2+1)^2}]=L^{-1}[\frac{1}{s^2+1}・\frac{s}{s^2+1}]$$
よって
\begin{eqnarray} =\sin{t}\ast \cos{t}& &= \int_{0}^{t}\sin{(t-u)}\cos{u} \ du\\& &=\frac{1}{2} \int_{0}^{t}\{\sin{t}+\sin{(t-2u)}\} \ du\\& &=\frac{1}{2}\left[u\sin{t}+\frac{1}{2}\cos{(t-2u)} \right]_0^t \\& &=\frac{1}{2}\{t\sin{t}+\frac{1}{2}\cos{(-t)}-\frac{1}{2}\cos{t}\}\\& &=\frac{1}{2}t\sin{t} \end{eqnarray}
積分の計算過程がわからなかった人は以下の記事の(9)の問題に似たような問題があるので参照してください。

(5)$L^{-1}[\frac{s-1}{(s-2)(s-1)}]$を求めよ
この問題も、このままではt領域に変換できそうもないので畳み込みか部分分数分解を利用することを考えます。与式は畳み込みを利用するとなると、$L^{-1}[(s-1)・\frac{1}{(s-2)}・\frac{1}{(s-1)}]$と3つの式の積になってしまうので難しそうです。ということで部分分数分解を利用します。
$$\frac{s-1}{(s-2)(s+1)}=\frac{a}{s-2}+\frac{b}{s+1}$$
$$s-1=(s+1)a+(s-2)b$$
$$s-1=(a+b)s+(a-2b)$$
よって係数比較することで
\begin{eqnarray}\left\{\begin{array}{l} a+b=1\\a-2b=-1\end{array}\right.\end{eqnarray}
したがって$a=\frac{1}{3},b=\frac{2}{3}$より
$$ L^{-1}[\frac{s-1}{(s-2)(s-1)}]$$
$$=L^{-1}[\frac{1}{3}・\frac{1}{s-2}+\frac{2}{3}・\frac{1}{s+1}]$$
$$=L^{-1}[\frac{1}{3}・\frac{1}{s-2}] +L^{-1}[\frac{2}{3}・\frac{1}{s+1}]$$
$$=\frac{1}{3}e^{2t}+\frac{2}{3}e^{-t} $$
逆ラプラス変換でも線形性により式を分けることができます。
まとめ
今回は逆ラプラス変換について解説しました。逆ラプラス変換はかなり重要なことであるので、しっかり問題を解けるようにしておきましょう。