【絶対わかる】ラグランジアンと最小作用の原理(ハミルトンの原理)

今回の記事ではラグランジアンと最小作用の原理(ハミルトンの原理)について解説していきます。

目次

ラグランジュ形式

ニュートンの3つの法則「慣性の法則」、「運動の法則」、「作用反作用の法則」を基本とする形式をニュートン形式と言いました。

これに対して、ラグランジアンと最小作用の原理を基本とする形式をラグランジュ形式と言います。ラグランジュ形式の運動方程式はスカラー量で表現されているため、運動方程式がベクトル量で表現されているニュートン形式に比べて、座標系の取り方の自由度がとても高いです。

ラグランジアンとは

ラグランジアンは、解析力学の基本原理である最小作用の原理を説明するために天下り的に導入されたものです。ラグランジアンとは簡単に言うと、ある物体系が持つ運動エネルギー$T$と位置エネルギー(ポテンシャルエネルギー)$U$の差です。このことを表した式は以下の通りです。

ラグランジアン

ある物体系のラグランジアン$L(q(t),\dot{q}(t),t)$を用いると

$$L=T-U$$

と表すことができる。

ラグランジアンにおいて位置座標$q(t)$と速度$\dot{q}(t)$は、全く別の変数として扱います。

ところで、このラグランジアン$L(q(t),\dot{q}(t),t)$を積分することで、「作用」というものが求まります。注意点として、この「作用」と作用反作用の「作用」は全くの別物です。この「作用」もラグランジアンとともに、最小作用の原理を説明するにあたり必要な事柄です。

一般化座標$q(t)$について

ラグランジアン$L(q(t),\dot{q}(t),t)$にて、いきなり出てきた関数$q(t)$についての説明をしておきます。まずラグランジュ形式では、座標変数の設定の自由度が高く、複雑な問題を座標を適切に選ぶことによって容易にすることができます。主な座標設定として、デカルト座標や極座標などがあります。

ここでいう座標とは「原点からの距離」のような「長さ」を表すものであるとは限らず、もっと広い意味でとらえる必要があります。したがって、この座標$q(t)$のことを一般化座標といいます。

$L=T-U$は何を表すのか

ラグランジアンの式$L=T-U$の物理的意味は一体何なのかと疑問を抱いた人も多いと思います。例えば$L=T+U$であったなら、ラグランジアンは力学的エネルギーを表しているのだと物理的に解釈することができます。

この答えは「ラグランジアンに物理的意味はない」です。あくまでもラグランジアンとは、最小作用の原理を説明するために都合よく設定された関数です。

最小作用の原理(ハミルトンの原理)とは

最小作用の原理(ハミルトンの原理)とは、力学系がある決まった時間内にある1点から他の1点へ移動するときに、実際に通る経路は作用が最小に(正確には停留)なる経路を通るということを定めた原理です。これはラグランジアンを用いることで以下のように与えられます。

最小作用の原理(ハミルトンの原理)

2つの時刻$t=t_1$と$t=t_2$において、$t_1 \lt t \lt t_2$のとき自由度Nの系の運動は、作用を$S[q]$とすると

$$S[q]=\int_{t_1}^{t_2} L(q(t),\dot{q}(t),t) \ dt$$

を最小にするように実現する。

ここで$q(t)$の関数の値が変わるとSの値も変わるので、Sは汎関数と呼ばれます。

作用が停留になる経路とはどういう意味か

「最小作用」は伝統的な呼び方であり、正確には、力学系は作用が停留となる経路を通ります。では作用が停留になる経路とはどういう意味かというと、作用の微分が0となる経路という意味です。つまり運動の経路に沿って作用$S[q]$が極値を持ちます。

よって最小作用の原理(ハミルトンの原理)は、変分記号$ \delta $を使うことで以下のように表すこともできます。

最小作用の原理(ハミルトンの原理)

2つの時刻$t=t_1$と$t=t_2$において、$t_1 \lt t \lt t_2$のとき自由度Nの系の運動は、作用を$S[q]$とすると

$$\delta S=\delta \int_{t_1}^{t_2} L \ dt=0$$

を満たすように実現する

まとめ

今回は、ラグランジアンと最小作用の原理(ハミルトンの原理)について解説しました。これらの導入は、古典物理学の大半を基礎づけるものです。しっかり理解しておきましょう。

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