今回の記事ではリッカチの微分方程式について解説していきます。ベルヌーイの微分方程式の知識を使うので忘れている方は以下の記事を参照してください。
リッカチの微分方程式とは
次の形の微分方程式をリッカチの微分方程式と言います。
$$\frac{dy}{dx}+P(x)y^2 +Q(x) y+R(x)=0$$
つまり$\frac{dy}{dx}$=(xだけの関数)$y^2$+(xだけの関数)$y$ +(xだけの関数)=0の形です。この微分方程式は、一般に解くことは不可能です。しかし特殊解がわかっているときは、一般解を求めることができます。
リッカチの微分方程式の解き方
リッカチの微分方程式は以下の3STEPで解くことができます。
まず与式の特殊解$y_1(x)$の1つを推察します。これは数学的に求めることはできないので、それっぽい数字を代入して特殊解かどうか確かめてみるしかないです。問題文に示されていることも多いです。
一般解を$y=y_1(x)+u$とおいて与式に代入します。これで与式はベルヌーイの微分方程式となります。
ベルヌーイの微分方程式を解いて、uをyの式に戻します。
この3STEPを使って例題にチャレンジしてみましょう。
【例題(1)】$\frac{dy}{dx}+y^2 +4y+ 3=0 $を解け
まずは特殊解$y_1(x)$の1つを求めます。$y^2 +4y+ 3=0$の解が簡単に求められることから、特殊解の1つは$y_1(x)=-1$だと推察することができます。実際に$y=-1$とそれをxで微分した$\frac{dy}{dx}=0$を与式に代入してみると、(左辺)=(右辺)となることより、確かに特殊解の1つは$y_1(x)=-1$だとわかります。よって一般解を$y=-1+u$とおくと$\frac{dy}{dx}=\frac{du}{dx}$であり、これらを与式に代入します。
$$\frac{du}{dx}+(-1+u)^2 +4(-1+u)+3$$
$$\frac{du}{dx}+2u=-u^2 \quad (1) $$
これでベルヌーイの微分方程式になりました。これを解いていきます。まず$z=u^{1-2}=u^{-1}$とおきます。この式の両辺をxで微分すると
$$\frac{dz}{dx}=\frac{dz}{du} \frac{du}{dx}=-u^{-2}\frac{du}{dx}$$
ここで$\frac{du}{dx}$の係数は$-u^{-2}$であるので、これを(1)の両辺にかけます。
$$-u^{-2}・\frac{du}{dx}-u^{-2}・2u=-u^{-2}・(-u^2)$$
この式にzを導入します。
$$\frac{dz}{dx}-2z=1 \quad(2)$$
これは1階線形微分方程式の非同次系です。$P(x)=-2$なので、$e^{\int P(x)}=e^{-2x}$より、(2)の両辺に$e^{-2x}$をかけると
$$e^{-2x}・\frac{dz}{dx}+e^{-2x}・(-2z)=e^{-2x}・1$$
ここで左辺を$\frac{d}{dx}(ye^{\int P(x) \ dx})$と変形すると
$$\frac{d}{dx}(e^{-2x}z)=e^{-2x} $$
両辺をxで積分します。
$$e^{-2x}z=-\int e^{-2x} \ dx$$
$$e^{-2x}z=-\frac{1}{2}e^{-2x}+C$$
$$z=-\frac{1}{2}+Ce^{2x}$$
zをもとに戻して
$$\frac{1}{u}=-\frac{1}{2}+Ce^x$$
最後にuをもとに戻して
$$\frac{1}{y+1}=-\frac{1}{2}+Ce^{-x}$$
これで微分方程式を解くことができました。
練習問題
練習問題にチャレンジしてみましょう。
$\frac{dy}{dx}+xy^2 -(2x^2 +1)y+x^3+x-1=0$が特殊解$y=x$をもつ。このときこの微分方程式を解け
特殊解が$y=x$なことより、一般解を$y=x+u$とおくと$\frac{dy}{dx}=1+\frac{du}{dx}$であり、これらを与式に代入する。
$$1+\frac{du}{dx}+x(x+u)^2 -(2x^2 +1)(x+u)+x^3+x-1=0$$
$$\frac{du}{dx}-u=-ux^2 \quad (1)$$
これでベルヌーイの微分方程式になりました。これを解いていきます。まず$z=u^{1-2}=u^{-1}$とおきます。この式の両辺をxで微分すると
$$\frac{dz}{dx}=\frac{dz}{du} \frac{du}{dx}=-u^{-2}\frac{dy}{dx}$$
ここで$\frac{dy}{dx}$の係数は$-u^{-2}$であるので、これを(1)の両辺にかけます。
$$-u^{-2}・\frac{dy}{dx}-u^{-2}・(-u)=-u^{-2}・(-ux^2)$$
この式にzを導入します。
$$\frac{dz}{dx}+z=x \quad(2)$$
これは1階線形微分方程式の非同次系です。$P(x)=1$なので、$e^{\int P(x)}=e^x$より、(2)の両辺に$e^x$をかけると
$$e^x・\frac{dz}{dx}+e^x・z=e^x・x$$
ここで左辺を$\frac{d}{dx}(ye^{\int P(x) \ dx})$と変形すると
$$\frac{d}{dx}(e^x z)=x e^x $$
両辺をxで積分します。
$$e^x z=\int x e^x \ dx$$
$$e^x z=xe^x -e^x+C$$
$$z=x-1+Ce^{-x}$$
zをもとに戻して
$$\frac{1}{u}=x-1+Ce^{-x}$$
最後にuをもとに戻して
$$\frac {1}{y-x}=x-1+Ce^{-x}$$
これで微分方程式を解くことができました。
まとめ
今回はリッカチの微分方程式について解説しました。特殊解を見つけるのがなれるまでは難しいので、演習を繰り返して慣れていきましょう。