今回の記事では、難しい積分計算についてわかりやすく解説していきます。かなり難しい問題ですが、これらの積分計算ができるようになれば怖いものなしになるでしょう。計算力は得点に直結します。完璧になるまで演習を繰り返しましょう。
難しい積分計算の演習
以下の問題では「(Cは積分定数である)」を省略しています。実際には必ず書いてください。
(1) $$\int \frac{1}{ \sin{x}} dx$$
今回の問題のように、一見難しくないのになぜか解けない三角関数の積分は
$\sin^2{x}=1-\cos^2{x}$や$\cos^2{x}=1-\sin^2{x}$を利用すればなんとかなることがあります。 $\frac{1}{ \sin{x}} $ の分母と分子に$\sin{x}$をかけて変形していくと
\begin{eqnarray} \frac{1}{ \sin{x}} & & =\frac{\sin{x}}{\sin^2{x}}\\& & =\frac{\sin{x}}{1-\cos^2{x}}\\& &=\frac{\sin{x}}{(1-\cos{x})(1+\cos{x})}\end{eqnarray}
積分において積は和にするのが定石なので、部分分数分解をすることで積を和に直します。
\begin{eqnarray} \int \frac{1}{ \sin{x}} dx& &=\int\frac {\sin{x}}{(1-\cos{x})(1+\cos{x})}dx\\& &=\int\frac{1}{2}(\frac{\sin{x}}{1-\cos{x}}+\frac{\sin{x}}{1+\cos{x}})dx\\& &=\frac{1}{2}(log|1-\cos{x}|-log|1+\cos{x}|)+C\\& &=\frac{1}{2}log\frac{1-\cos{x}}{1+\cos{x}}+C\end{eqnarray}
(2) $$\int \frac{1}{ \cos{x}} dx$$
(1)と同じ要領でやっていきます。$\frac{1}{ \cos{x}} $ の分母と分子に$\cos{x}$をかけて変形していくと
\begin{eqnarray} \frac{1}{ \cos{x}} & & =\frac{\cos{x}}{\cos^2{x}}\\& & =\frac{\cos{x}}{1-\sin^2{x}}\\& &=\frac{\cos{x}}{(1-\sin{x})(1+\sin{x})}\end{eqnarray}
したがって
\begin{eqnarray} \int \frac{1}{ \cos{x}} dx& &=\int\frac {\cos{x}}{(1-\sin{x})(1+\sin{x})}dx\\& &=\int\frac{1}{2}(\frac{\cos{x}}{1-\sin{x}}+\frac{\cos{x}}{1+\sin{x}})dx\\& &=\frac{1}{2}(-log|1-\sin{x}|+log|1+\sin{x}|)+C\\& &=\frac{1}{2}log\frac{1+\sin{x}}{1-\sin{x}}+C\end{eqnarray}
(3) $$\int\frac{1}{1+\sin{x}} dx$$
$\sin^2{x}=1-\cos^2{x}$や$\cos^2{x}=1-\sin^2{x}$を利用することを考えます。$\frac{1}{1+\sin{x}}$の分母と分子に$1-\sin{x}$をかけて変形していくと
\begin{eqnarray}\frac{1}{1+\sin{x}} & &=\frac{1-\sin{x}}{1-\sin^2{x}}\\& &=\frac{1}{\cos^2{x}}-\frac{\sin{x}}{\cos^2{x}} \end{eqnarray}
したがって
$$\int\frac{1}{1+\sin{x}} dx=\tan{x}-\frac{1}{\cos{x}}+C$$
$\int\frac{1}{cos^2{x}}dx=\tan{x}+C$,$\int\frac{1}{sin^2{x}}dx=-\frac{1}{\tan{x}}+C$,$\int a^xdx=\frac{a^x}{loga}+C$などの基本関数は忘れやすいので、しっかり覚えましょう。また、$\frac{\sin{x}}{\cos^2{x}}$の計算は、$\cos{x}=t$と置換することで計算することができます。
(4) $$\int\frac{1}{1+\cos{x}} dx$$
(3)と同じ要領でやることもできますが、より早い方法があります。半角の公式 $\cos^2{\frac{x}{2}}=\frac{1+\cos{x}}{2}$より
$$1+\cos{x}=2\cos^2{\frac{x}{2}}$$
したがって与式にこれを代入して計算することで
$$\int\frac{1}{1+\cos{x}} dx=\tan{\frac{x}{2}}+C$$
(5) $$\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}dx$$
この式の置換は丸暗記してください。$t=x+\sqrt{x^2+1}$ と置換すると
\begin{eqnarray}\frac{dt}{dx}& &=1+\frac{2x}{2\sqrt{x^2+1}}\\& &=\frac{\sqrt{x^2+1}+x}{\sqrt{x^2+1}}\end{eqnarray}
ここで、分母に$\sqrt{x^2+1}$がでてきたので、分子中のxを消すことでtだけの関数にすることができますね。最初に$t=x+\sqrt{x^2+1}$と置換していたので、分子にこれを代入してみれば、簡単に積分できそうな形になります。よって
$$dt=\frac{t}{\sqrt{x^2+1}}dx$$
とすることにより
\begin{eqnarray}\int\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}dx& &=\int\frac{1}{t}dt\\& &=log|t|+C\\& &=log(x+\sqrt{x^2+1})+C\end{eqnarray}
不定積分なので、置換したtはちゃんともどしておくことを忘れてはいけません。
(6) $$\int\sqrt{x^2+1} \ dx$$
この問題は(5)とセットで覚えましょう。部分積分することで(5)の形が出てくるように変形します。
\begin{eqnarray}\int\sqrt{x^2+1}dx& &=\int 1\cdot\sqrt{x^2+1}dx\\& &=x\sqrt{x^2+1}-\int\frac{x^2}{\sqrt{x^2+1}}dx\\& &=x\sqrt{x^2+1}-\int\frac{(x^2+1)-1}{\sqrt{x^2+1}}dx\\& &=x\sqrt{x^2+1}-\int\sqrt{x^2+1}dx\\& &+\int\frac{dx}{\sqrt{x^2+1}}\end{eqnarray}
ここで与式と同じ式が出てきたのでまとめておきます。
$$\int\sqrt{x^2+1} \ dx=\frac{1}{2} \{x\sqrt{x^2+1}+\int\frac{dx}{\sqrt{x^2+1}}\}$$
ここで、(5)の結果を利用することで
$$\int\sqrt{x^2+1} \ dx=\frac{1}{2} \{x\sqrt{x^2+1}+log(x+\sqrt{x^2+1})\}+C$$
(7) $$\int\frac{dx}{4+5\sin{x}}$$
この問題は(3)に形が似ていますが、係数がそれぞれ異なっているため$\sin^2{x}=1-\cos^2{x}$や$\cos^2{x}=1-\sin^2{x}$を利用することが難しくなっています。このように、$\sin{x}$や$\cos{x}$で表された関数でうまく変形できそうにないと思ったときは切り札があります。それは
$$t=\tan\frac{x}{2}$$
と置換することです。この解法はほとんどの問題で使えるというメリットと引き換えに、計算過程が長くなりやすいというデメリットがあります。あくまで最終手段として使うようにしましょう。
このとき
\begin{eqnarray}\frac{dt}{dx}& &=\frac{1}{2}・\frac{1}{\cos^2{\frac{x}{2}}}\\& &=\frac{1}{2}(1+tan^2{\frac{x}{2}})\\& &=\frac{1+t^2}{2}\end{eqnarray}
このあと式にある三角関数をtの式に直すのが定石です。今回は式に$\sin{x}$があるので、これをtの式に直すことを考えます。
\begin{eqnarray}\sin{x}& &=2\sin{\frac{x}{2}}\cos{\frac{x}{2}}\\& &=2\tan{\frac{x}{2}}\cos^2{\frac{x}{2}}\\& &=\frac{2t}{1+t^2}\end{eqnarray}
したがって
\begin{eqnarray}\int\frac{dx}{4+5\sin{x}}& &=\int\frac{1}{4+5・\frac{2t}{1+t^2}}・\frac{2}{1+t^2}dt\\& &=\int\frac{1}{(2t+1)(t+2)}dt\\& &=\frac{1}{3}\int(\frac{2}{2t+1}-\frac{1}{t+2})dt\\& &=\frac{1}{3}(log|2t+1|-log|t+2|)+C\\& &\frac{1}{3}log|\frac{2t+1}{t+2}|+C\end{eqnarray}
不定積分なので、もちろん置換したtはちゃんともどしておくことを忘れてはいけません。
$$\frac{1}{3}\log|\frac{2\tan\frac{x}{2}+1}{\tan\frac{x}{2}+2}|+C$$
(8) $$\int\sqrt{1+e^x} \ dx$$
$\int f(e^x)dx$の式は、$t=e^x$と置換するのが定石ですが、ルートが入っていて複雑な式になっているので、$t=\sqrt{1+e^x}$とまるごと置換することを考えます。このとき
$$t^2=1+e^x$$
より
$$x=\log(t^2-1)$$
であるので
$$dx=\frac{2t}{t^2-1}dt$$
よって
\begin{eqnarray}\int\sqrt{1+e^x} \ dx& &=\int\frac{2t^2}{t^2-1} \ dt\\& &=2\int(1+\frac{1}{t^2-1})dt\\& &=2t+\int\frac{2}{(t-1)(t+1)}dt\\& &=2t+\int(\frac{1}{t-1}-\frac{1}{t+1})dt\\& &=2t+log|t-1|-log|t+1|+C\\& &=2\sqrt{1+e^x}+\log\frac{\sqrt{1+e^x}-1}{\sqrt{1+e^x}+1}+C \end{eqnarray}
(9) $$\int\sin{x}\cos{2x} \ dx$$
まずは積を和にすることからやっていきます。ここで積和の公式を使います。
$(1)\sin{\alpha}\cos{\beta}=\frac{1}{2}\{\sin{(\alpha+\beta)}+\sin{(\alpha-\beta)}\}$
$(2)\cos{\alpha}\sin{\beta}=\frac{1}{2}\{\sin{(\alpha+\beta)}-\sin{(\alpha-\beta)}\}$
$(3)\cos{\alpha}\cos{\beta}=\frac{1}{2}\{\cos{(\alpha+\beta)}+\cos{(\alpha-\beta)}\}$
$(4)\sin{\alpha}\sin{\beta}=-\frac{1}{2}\{\cos{(\alpha+\beta)}-\cos{(\alpha-\beta)}\}$
この問題では(1)を使いましょう。
\begin{eqnarray} \int\sin{x}\cos{2x} \ dx& &=\int\frac{1}{2}\{\sin{3x}+\sin{(-x)}\} \ dx\\& &=\frac{1}{2}\int (\sin{3x}+\sin{(-x)}) \ dx \end{eqnarray}
ここで$\sin{(-x)}=-\sin{x}$であるので
$$=\frac{1}{2}\int (\sin{3x}-\sin{x}) \ dx$$
$$=\frac{1}{2}(-\frac{1}{3}\cos{3x}+\cos{x})+C$$
$$=-\frac{1}{6}\cos{3x}+\frac{1}{2}\cos{x}+C$$
(10) $$\int e^x\sin{x} \ dx$$
(指数関数) $\times$ (三角関数)の積分は特殊な方法で行います。解法は与式を文字で置いたあと、その式が現れるまで部分積分します。よって$I=\int e^x\sin{x} \ dx$とおくと
\begin{eqnarray}I& &= \int e^x\sin{x} \ dx\\& &=\int (e^x)’\sin{x} \ dx\\& &= e^x\sin{x}-\int e^x\cos{x} \ dx \end{eqnarray}
まだ与式が現れていないので部分積分をもう一回します。ここで1つ注意点があります。今回のように最初の部分積分で指数関数を$(e^x)’$として計算した場合次の部分積分でも同じく$(e^x)’$として計算してください。この理由はあとで解説します。よって
$$= e^x\sin{x}-\int (e^x)’\cos{x} \ dx $$
$$= e^x\sin{x}-\{e^x\cos{x}-\int e^x(-\sin{x}) \ dx\} $$
$$= e^x\sin{x}-e^x\cos{x}-\int e^x(-\sin{x}) \ dx $$
$$=e^x(\sin{x}-\cos{x})-I$$
よって
$$I=\frac{1}{2}e^{x}(\sin{x}-\cos{x})$$
したがって
$$\int e^x\sin{x} \ dx=\frac{1}{2}e^{x}(\sin{x}-\cos{x})+C$$
部分積分を同じく$(e^x)’$にしなかった場合を考えます。このとき
$$=e^x\sin{x}-\int e^x(-\cos{x})’ \ dx$$
$$= e^x\sin{x}-\{e^x\sin{x}-\int e^x\sin{x} \ dx\}=I $$
と式が戻ってしまいます。、もし三角関数を$(-\cos{x})’$として部分積分したいのなら一番最初の部分積分もそう計算してください。
まとめ
この10問を完璧にできたあなたは、積分計算で困ることはあまりないでしょう。何回も積分の演習をすることで計算速度を上げていきましょう。